赤の門ニュース(2024年上半期)

赤の門ニュース(2024年上半期)

2024年8月24日

5位 卓越大学院 東北大が認定

▲2023年度の「THE日本大学ランキング」にて1位を獲得した東北大学。

画像出典:東北大学 アクセスマップ 

世界大学ランキングを始めとした複数の格付けにおいて、西日本の同じ地方国立大学である京都大学はもちろん、紛うことなき日本一の大学である東京大学も追い抜きつつある東北大学が、前2校を差し置いて初の「国際卓越認定大学」に認定された。東北大にあって東大にないものと言えば、広大な自然と純朴な田舎青年の心持くらいだから負けることはなかろうと偏見MAXで高を括っていたのだが、まさかの下剋上という結果となった。田舎で勉強以外することがない故に無駄な研究力を身に着けたのだろうと詳細を探ってみると、申請にあたって東北大学は「25年以内の論文数4倍」などの無茶な理念を掲げて通過したらしく、小池百合子もビックリである。

4位 「文科4類」か!? 5年生新課程

画像出典:College of Design(仮称)構想に関する報道について

東北大に負かされて焦りを募らす東京大学は、「文科4類」とも言える5年制の新課程を増設することを発表した。授業は全部英語で、文理を枠組みを超えて自分でカリキュラムを構築するのがウリらしいが、これだけ聞くと「語学偏重」で「学生自身がカリキュラムを作る」とのことで現在の後期教養と似たコンセプトとなっている。そうはいっても新設過程では5年で修士までいけるなどプラスの側面が多く、外国教員を放り込んで国際教育に力を入れることで大学ランキングを無理矢理向上させようという見え透いた意図を差し引いても、新入生にとっては選択肢が増えていいんじゃないだろうか。

現在、東京大学では文理を問わず英会話・英語論文の授業が必修になっているが、皆ろくに喋れるようになる気配がない。そう考えると、英語を学科公用語にしてしまって強制的に英語漬けにするやり口もわからなくはない。しかし、上述した必修の英会話・英語論文の授業はあまりに負担が強いために英語に恐怖心を抱く学生も増えていることから、新課程でもそうならないよう配慮が必要だろう。

3位 東大入試 第一次選抜の定員を1000人削減

当局は7月の記者会見において、理科三類を除く5学科の2025年度入試における第一次選抜の定員倍率を3.0倍から2.5倍に縮小したことを発表した。入試本番において人員に余力を持たせることにより、配慮が必要な受験生に十分なサポートを提供するという意図が一つにはあるのだろう。近年では2023年の文Ⅲ、24年の文Ⅰ・Ⅱなど、そもそも志望者数が3.0を下回っているために足切りが実施されない事例が多々見られたが、これにより、「一次試験は足切りギリだったけど二次試験で挽回」ということが起こり辛くなった。加えて科目の再編成や新科目「情報」の必修化、国語の近現代の文章の増加など、一次試験において受験性に求められるボリュームが著しく増加しており、センター試験から共通テストに移行するにつれて見られた処理速度の速さを求める傾向がさらに増加する恐れがある。

筆者の体感でいうと、やはり共通テスト以後と以前の合格者を比べた際に、良くも悪くもセンター試験で合格した東大生の方が個性豊かというか不器用というか、能力に偏りが見られたように思われる。AI時代の創造性が云々と高らかに喧伝する割には、官僚のように膨大な情報を短時間で裁く事務処理能力を要求するテスト傾向を加速させるのは不可解極まりない。これでは次世代の成田祐輔や茂木健一郎は生まれないぞ、と声を大にして言いたいが、確かにふるいにかけた方が世間のためかもしれない。

2位 東京大学 ロゴマークを一新

▲東京大学の過去のロゴの変遷図。発信力を考えて「UTokyo」の表記のみ。国際化の波に飲まれて漢字は消滅した模様。

画像出典:4月から東大のロゴマークが(ちょっと)変わります 「世界の誰もが来たくなる大学」になるためのビジュアルアイデンティティ(VI)確立へ

元電通、現Googleバイスプレジデントである岩村水樹理事主導の元、2024年4月より東京大学のロゴマークが「よりModernでFriendlyなロゴに」刷新された。「2021年に理事に就任した当初から、東大にはビジュアルアイデンティティ(VI)の確立が必要だと感じていました」と語る岩村理事は、新しいロゴを作成するにあたって国際的な東京大学のブランドイメージの拡散と浸透を念頭に置き、2004年より用いられてきた旧ロゴの厳格かつ権威的なイメージからより親和的かつデジタル媒体において利便性の高い形に刷新した。銀杏のマークはそのままに、漢字で書かれた「東京大学」から英語略称である「Utokyo」へと変更することで、国際的な知名度の向上を狙ったものと思われる。2015年にGoogleが従来のロゴからより簡易的なものに変更した試みと同じ施策を東大において行ったものと考えられ、コンサル仕込みの岩村理事の手腕が発揮されたものと思われる。

▲海外他大学のロゴとの比較の末決定されたらしい。税金や学費はこうして使われるのかと思うと一学生として感慨深い。

当の学生からして見れば東大のロゴが変わったことなど言われてみないと気付かないし、言われてみることもないので大半の学生はロゴが変わったことなど知らないまま日常を過ごしているのだが、確かに「Utokyo」と海外向けにすることで知名度の向上に貢献するかもしれない。正直、駒場図書館の空調の効きが悪くてとても勉強どころではないし、校舎内にコンセントが少なすぎてパソコンの充電すらままならない。コンサル代とデザイナーの雇用費をそちらに回して欲しいというのが一学生としての筆者の本音なのだが、虚に虚を重ねて金を巻き上げるコンサルの本領発揮といったところか、実際のキャンパスライフを改善する方向ではなく外向きのキラキラしたブランドイメージを構築する所にコストをかけているらしいが、何故東北大に負けたのか理解していないのだろうか。

1位 学費値上げ反対運動

「学費値上げ反対緊急アクション」xより。

5月中旬に東京大学が10万円の学費値上げが検討されていることが発表された。当然ながらあまりに反対の声が多かったため、学生と大学総長との間に「対話」の場を設けるという体で、当局は6月21日にオンラインで「総長対話」を行った。完全予約制だったこのイベントをなんとしても見んと、申し込み損ねた学生たちは学生自治会・その他団体が開催しているパブリックビューイングに参加した。「対話」は「録音・録画禁止」と説明されていたが、「配信は禁止されていない」ことで某学生団体によりYouTubeにて「対話」の生配信を行なわれた。これに対し、東京大学学生支援課はわざわざYoutubeのアカウントを作って配信を止めるようにコメント欄に乗り込んできた他、後日某団体に対し個別に事情聴取をしたことがある情報筋より明らかになった。

教養学部学生自治会のアンケート(回答者数 2,297 名)では、なんと9 割を超える学生が値上げに反対したという。

教養学部表象文化論コースにおいても反対の決議投票が行われて全会一致で反対が決まった他、教養・教育学部主体で「対話」の文字起こしが行われるなど、教員・学生含め大学内では学費値上げ反対の機運が強い。本郷では、駒場キャンパスにてガザ連帯のデモ活動・キャンプ設営を行っていた学生を中心とし、安田講堂前で学費値上げ反対を訴える抗議活動・デモ設営が行われた。本郷キャンパスは立て看の設置するとすぐに撤去されてしまうことを始めとして、駒場キャンパスに比べこういった運動の自由度が従来は低かったのだが、今回の一件で運動の機運が高まる可能性がある。学費値上げの最終決定は11月に行われる。

このように空前絶後の「学生自治」ブームが到来した裏で、実はひっそりと悲しい出来事があったようだ。総長対話の約1週間後、6月末に開催予定であった前期教養の自治委員会は自治委員の出席が定足に満たなかったがために、開催できなかったとのこと。なんと事態に際し、「執行部」に比してかなり穏当な自治委員会議長までこの事態にあたって自治委員を批判する声明を出したらしい。自治委員がボイコットしたのか、はたまた単なる自治会運営サイドの広報不足が原因なのか詳細は不明だが、いずれの場合にしてもこんな自治会では値上げ反対運動の先導は任せられないだろう。不安の残る結末である。

いかがだったでしょうか。

こうして振り返ってみると波乱に満ちた半年間でしたが、2024年は変革の年となるのでしょうか。

それでは、またお会いしましょう。赤ノ門ニュースでした。

文責【うんこうん太郎】